やさしい解説
・手が痛くならないダンゴの握り方
初心者が紀州釣りをする上で、最大の難関がここです。ダンゴを握るうちに手を痛めて嫌になってしまう初心者は非常に多いです。
このページで見て、手が痛くならないようにしましょう。
【ダンゴ材の量】
まず第一に気をつけたいのは、ダンゴの大きさです。大きすぎるダンゴは握りづらいし、それだけで手を痛めます。
バッカンからダンゴ材を手に取るときは少し力をこめて、
むんずと上から掴むように取ってください。そうして手を開くと自然とダンゴ材が、てのひらの中で半分に割れます。この中にサシエサを入れましょう。下からすくうようにダンゴ材を取ると、てのひらの中で半分に割れませんので注意です。
初心者がやりがちなミスが、ダンゴ材を手に取ってサシエサを包んだ後、さらにもう片方の手でダンゴ材を足して握ることです。これだとダンゴ材が不必要に大きくなるし、その大きさが毎回まちまちになりやすいので、やめた方がよいと思います。
【ダンゴを握る】
最初に説明をわかりやすくするために、手に名前を付けさせてもらいます。
右手、左手ではなく、ダンゴに覆いかぶさっている手を「上の手」、ダンゴを持っている手を「下の手」と呼ぶことにします。
第一に、下の手のひじはひざの上に置きましょう。こうすることによって、上の手がガンガン体重を掛けても、下の手にも耐えられるようになります。
下の手の手首が痛くなる人は、思い切って手の甲をひざに乗せてしまいましょう。そうすれば手首は大丈夫です。
さて、下の手に上の手を被せてダンゴを握るわけですが、上の手で重要なのは握力ではなく体重を一瞬掛けて握ることです。そのためには上の手のひじは伸ばし気味にしましょう。そうすると体重が掛かるようになります。少しくらいならひじを曲げていてもよいですが、大きく曲げていると、体重が掛からなくて握力のみでダンゴを握ることになってしまいます。
ぐぐぐーーっと、ダンゴを握ると、これもまた疲れてしまうので、ぐっぐっとリズミカルに握りましょう。
また、上の手は人差し指と親指の付け根で、ダンゴをつまむ(押す)ようなイメージで握ると、あまり手が痛くなりません。
また、握るときに初心者がやりがちなミスがこちらです。
ダンゴに接する指先はなるべく手の中に入れましょう。てのひらでダンゴを握るのではなく、指先でダンゴを握るのです。
最後に力加減です。
もしこの良いフォームを真似して、手が痛くなるようならば、それは力の入れすぎです。下の手が痛いならば、下の手の力の入れすぎ。上の手が痛いならば、上の手の力の入れすぎです。もう少し力を抜きましょう。
不思議なことに、上の手と下の手の力加減が同じになると、まったく手が痛くならなくなります。
手が痛くならないように、あとは練習あるのみです!
これでもまだ痛くなるなら、以下の点を見直してください。
・水分量は適切ですか? ダンゴ材はパサパサに乾いてませんか? ダンゴが握りにくかったら、どんどん海水やアミエビを追加しましょう。初心者の人を見てると、乾燥したダンゴ材のまま、ムリに頑張って握っていることが多いです。
・ヌカと砂の分量は適切ですか? 6対1がオススメです。
・初心者にも握りやすい紀州マッハ攻め深場を使ってますか?
・ダンゴ材を自作しているのなら、砂にアジャストサンドを使ってますか?
・ホームセンターの荒い砂利みたいな川砂を使ってませんか?
参考→砂:採取、ホームセンターの砂、アジャストサンド
詳しい解説
・クロダイの気配を感じる
ダンゴのコントロールは基礎にして奥義です。
突然なにを言い出したのかと思われるかもしれませんが、紀州釣りではこれが真実だと管理人は信じています。
紀州釣りでは、クロダイの気配を感じて釣ることができます。同じことを繰り返していたら突然釣れた……のではなく、そろそろ釣れそうだな……いま確実にクロダイがいるな……と気配を感じながら釣ることができるのです。
そのときの胸の高鳴りは心地よく、これぞ紀州釣りの醍醐味といっても過言ではありません。
では、なぜ釣ってもいない魚が、そろそろ釣れそうなどとわかるのでしょうか。
それは
クロダイが寄って来ると、ダンゴが割れるのが早くなるからです。
具体的には、いままで2分保持していたダンゴが1分30秒で割れたりします。
なぜこんな現象が起こるのかと言うと、それは普段クロダイが食べているものにヒントがあります。野生のクロダイのエサは、ノリなどの海藻類であったり、アナジャコだったり、小魚だったりしますが、一番の主食は貝類です。固い貝を噛み砕くために、クロダイの奥歯は草食動物のように臼の形状をしています。そして非常にアゴの力が強いです。
だからクロダイがダンゴをつつくと、エサ取りとアゴの力が段違いなので、いままでよりもずっと早くダンゴが割れるようになるのです。
・ダンゴの固さを一定にする
さて、クロダイの気配を感じるためには、
ダンゴの握り加減を毎回同じにすることが条件となります。でなければ、握り加減が変わったからダンゴが早く割れたのか、クロダイが到来したからダンゴが早く割れたのか、どちらなのかわかりません。
紀州釣り上級者は、この握る圧力を一定にするテクニックを完全に身につけています。いわば必須テクニックと言ってもよいでしょう。
たとえば適当に握ったダンゴが1分30秒で割れたとしたら、次の一投も見事に1分30秒前後で割れるダンゴを握ることができます。
これが出来るようになるために紀州釣り初心者は、最初の1・2年間は「握り圧力一定」だけで釣りをして、よく練習した方が良いです。
では、簡単に握り加減を一定にする方法を述べます。
ダンゴ材をパサパサの乾いた状態にして、毎回100%の力をこめてダンゴを握りましょう。
そうすれば、自然と握り加減が一定になります。人間の筋力の限界値は回数を重ねてもそんなに大差ないからです。たとえば握力測定で、右手が全力で50kgだったとしたら、数分後、2回目の計測も50kg程度になるのは当然のことです。
そして練習を重ねて、自分の100%の握り加減を理解してください。それさえ分かれば、70%も50%も30%もなんとなく分かるものです。
自分の力の基準を体感的に把握していないと、いきなり70%で握れと言われても、それはきっと不可能です。基準がないですから。
最終的には、1分で割ってと言われたら1分で割れるダンゴを、2分と言われたら2分で割れるダンゴを、自由自在にコントロールできるようになることを目標としてください。
(なぜダンゴ材をパサパサの乾いた状態にする必要があるのか? それはこちらをどうぞ。
→ダンゴ材の水分量と握り加減の調節範囲)
・芯圧(しんあつ)をかけずに握る
「芯圧」とはダンゴの芯(サシエサがある中心部分)の圧力(固さ)のことで、「芯圧をかけずに握る」とは、簡単に表現するとおにぎりを握るようにダンゴを成形する握り方のことです。
おにぎりを握るとき、まさか中心に包まれた中の具が潰れるくらい力一杯体重をかけて握る人はいないはずです。お米が纏まるようにペタペタと軽く握って成形していくのが普通です。
この握り方をそのまま紀州釣りのダンゴ材に応用すれば、「芯圧をかけない握り方」となります。すなわち、ペタペタと軽くダンゴを握って成形し「これくらいの固さならば空中爆発せずに投げれるだろう」という固さまで握るのです。
この握り方は
冬や春、活性が低くてダンゴを固く握ると3分や5分も割れなくなるとき、もしくはダンゴをゆっくり沈下させたいときに使います。
なぜダンゴをゆっくり沈下させたいときがあるのか? それは
第8章の記事をご覧ください。
・握り加減を回数で調整するか圧力で調整するか
これはかかり釣りなんかでもよく出る話です。
「握り加減をどのようにコントロールすれば良いですか?」という問いに対して「握る圧力を一定にして回数で調整する」という回答は初心者にもとてもわかりやすく、また実践しやすいです。
10回握った、15回握った、20回握った……というのは誰の目で見ても明らかだからです。とてもわかりやすいので、釣り具メーカーもこの説明を前面に推しているみたいです。「握り加減は握った回数をカウントして調整しましょう」と。
しかしこの握り方にもデメリットがあります。
それは「芯圧をかけていないダンゴ」そして「パサパサに乾いたダンゴ材をカッチカチに握ったダンゴ」この2つを握ることは不可能という点です。
芯圧をかけていないダンゴというのは、弱い力で何度もペタペタと握ることによって成立します。
回数ではなく、圧力によって調整しないと握ることができません。
パサパサに乾いたダンゴ材をカッチカチに握ったダンゴ。これはダンゴ材が乾いているので、そもそも全力を出さないとダンゴの形になりません。
弱い圧力では何度回数を重ねてもダンゴ状にまとまることはありません。回数ではなく、圧力を強めないとどうしても握ることができないのです。
とはいえ、別に初心者の頃は回数を基準にして良いと思います。その方がわかりやすいし、きっと楽しいでしょう。
そもそも初心者の頃は、なんのために、どんなときに「芯圧をかけてないダンゴ」や「パサパサに乾いたダンゴ材をカッチカチに握ったダンゴ」を使うのかわからないはずです。
最初からそんな、ややこしいことしなくていいです。回数を基準にしてダンゴを握って、紀州釣りを楽しんでください。
とりあえず初心者は、夏や秋なら「海底で1分割れずに保持するダンゴ」になるように回数を調整して握ってみましょう。冬や春なら「海底で2分割れずにいるダンゴ」を目指しましょう。そうすればクロダイが釣れる確率がグッと上がります。
もっと上手くなりたい、もっとクロダイを釣りたいと思ったら、圧力を基準にダンゴを握ってみましょう。
そのためにはまず、自分の中で100%の力(基準)を作る必要があります。このへんの詳しい話はこのページの上部のほうでも語っているので参照してください。
→ダンゴの握り加減を毎回同じにするには
自分の100%の力(基準)を理解したら「さっきより少し弱めたこの圧力が80%かな?」「さらに少し弱めたこの圧力が60%かな?」と、自分の握り方の圧力を判別するために
名前を付けることができます。
それが実際に80%の圧力が掛かっているかどうかは関係ないのです。
「80%」と名付けた圧力が、「100%」と名付けた圧力よりも弱く、「60%」と名付けた圧力よりも強いことが重要です。
そして
「80%」を握ろうと思ったら、毎回「80%」のダンゴを握ることができる。それが重要です。
これができるようになれば、飛躍的に釣果がのびます。
紀州釣りの技術面で、最も大事なことは、ダンゴの割れる時間をコントロールすることだからです。クロダイがダンゴに近寄ってきたタイミングを見極めて、そのタイミングでダンゴを割ることが最も大事なのです。
まとめると、次のようになります。
回数を基準にすると、誰にでも簡単だが、対応できなくなる(握れなくなる)範囲がある。
圧力を基準にすると、何度も練習して自分の中で基準を作る必要があるが、どんなダンゴでも対応(握ること)ができる。
(この項目の記事はかなり専門的で難しい内容となってしまいました。たぶん初心者は何を言ってるのか、文意が伝わってないと思います。しかし、まあ、きっと上手になれば理解できますので、いまは気にしないで良いです)
・パサパサダンゴで腕試し
インターネット(主にYouTube)なんかで、紀州釣りの名人がこんなことを言っています。
「パサパサのキンキン(カチカチ)ダンゴは普通の人は握れない」
ここで言う「パサパサ」とはどんな水分量でしょうか?
そんな乾いたダンゴを使わなくても、釣果を上げることは十分可能です。これができる必要はあまりありません。
ただ、紀州釣りを始めて数年経った頃、管理人は「自分もそんなダンゴが握れるだろうか? どんな水分量か教えてもらって、一度腕試ししてみたい」とずっと思っていました。
もしかしたら、そんな人が他にもいるかもしれない。そう思ってこの記事を書きます。
紀州釣りの腕に覚えがある方は、ぜひ次の条件で腕試ししてみてください。
1・バッカンに1100ccのヌカを入れる。砂とか押し麦は要りません。
2・水道水を30cc入れる。
下画像のような小さな計量カップを百均で買って、水を入れましょう。
計量スプーンを使うのなら、小さじで6杯、大さじで2杯が30ccです。水を入れましょう。
3・ダマを潰してよく混ぜ込んだら握ってみる。
さて、うまく握れたでしょうか?
この水分量はかなり少ないので、画像のようにパサパサです。(画像だとわかりにくいでしょうが)
なので、握っても、うまくまとまりません。下画像のように、握っている最中によく崩れてしまいます。
このダンゴ材を握るにはコツが要ります。まずは緩い圧力で握り、ある程度丸くなったら一気に体重をかけて握るのです。もし手の中で崩れたのなら、それは均等に力が掛かっていない証拠です。
下の画像の右のダンゴのように握れたら成功です。あなたはスゴイ!…ということになります。
失敗なのが、画像の左のようなダンゴです。ダンゴの色に注目してください。ちゃんと固まっていないダンゴは白っぽい色をしています。対して、右のダンゴは表面がシミのように黒ずんでいます。こういうダンゴを握れたら成功です。
さて……。
もう一度言いますが、こんな乾いたダンゴを使わなくても、釣果を上げることは十分可能です。
あくまでも腕試しとしてやってみてください。
(ヌカが古かったり、精米する米によって、粘つきが異なります。水30ccというのは一つの目安です。ヌカの状態が悪ければ、水をもう5ccくらいは入れないと同じ条件にならないはずです)