【第7章:ダンゴを投げる】

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»最適な投げる距離は?カケアガリを狙おう
»投入動作:ダンゴの持ち方、ベール起こす、道糸を海面に浮かべる
»投入動作:道糸を指で押さえる、狙いをつける、投げる、竿をしゃくりか竿を下げておくか
»投入動作:ウキと道糸の操作、理想の位置とは?《重要》
»投入動作:道糸を出し巻き取る、手を払う
»ダンゴの着水音にも注意
   





質問

 最適な投げる距離を教えてください。

回答

 遠くへ投げれば必ずしも釣果が伸びるわけではありません。海底の地形を把握して、まずはカケアガリの少し先の落ち込みへ投げるのが良いでしょう。

やさしい解説

 ・ダンゴを投げる最適な距離


 ダンゴを近くに投げると魚が人間の気配を察して警戒するから遠投が良いんだ、と言う意見があります。
 果たして、それは本当でしょうか。

 少なくとも潮が濁って海底が見通せないのならば、それは関係ないと管理人は思います。魚の視力は人間より悪いのです。なので、人間から魚が見えないのならば、魚だって人間が見えるはずないのです。
(青の下線部分には参考文献があります。Amazon→海野徹也著 クロダイの生物学とチヌの釣魚学)



 ま、それはそうと、紀州釣りでは一つのセオリーとしてカケアガリを狙う作戦があります。
 クロダイは「面」に接しているエサが好きです。「地面」や「斜面」に接しているエサをよく食べ、宙に浮いて止まっているエサは活性が低いとなかなか食べません。
 なので、カケアガリの先にダンゴを投入し、ウキを手前に置きましょう。そうすることでクロダイの好きな「地面」や「斜面」にエサが接するようになります。

説明


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 ちなみに、当たり前のことだと思って深く解説しませんが、ダンゴは毎回可能な限り同じ場所に投入するのが基本です。あっちこっちへダンゴを投入すると、それだけクロダイやエサ取りが散ってしまいます。
 基本的なことですが、とても大切なことです。

 専用のヒシャクを使って遠投するかどうかは、個人の好みによります。管理人としては、カケアガリの先を狙うのをオススメするので、ダンゴは手投げで十分だと思います。





投入動作について

 

・投入動作

 ダンゴを握ったところから投入動作を説明します。
 
 1.人差し指と親指でハリスをつまみながらダンゴを持つ(手投げの場合)
 これは絶対にやらなければならない動作ではありませんが、できればやっておいた方がよいです。特に芯圧をかけていない柔らかいダンゴを持つ場合は、ハリスを指でつまんでおかないと糸やウキの重さで引っ張ってしまい、ダンゴが少し崩れることがあります。それは避けましょう。
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 2・リールのベールを起こす。
 リールのベールを起こして、糸が自由に出る状態にしましょう。
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 3.竿先を海面につけて何度かしゃくり、投げる距離分の道糸を先に海面に浮かべて出しておく
 これも必須動作ではありませんが、15m以上遠投するならばやった方が良いです。特にアウトガイトの竿を使っている場合、ダンゴを投げた瞬間にウキ止め糸がガイドに引っかかって、ダンゴが空中爆発するということがあります。先に道糸を海面に浮かべて、ウキ止め糸をガイドを通過させておけばそんなことは起きません。
 また、あらかじめ道糸を海面に浮かべておくことで、道糸の摩擦が少なくなり、飛距離が伸びるというメリットもあります。言葉だとわかりにくいので下図で説明します。

説明
 
説明

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 竿のすぐ下とか、竿先数メートルのところにダンゴを投げるとか、すぐ近くにダンゴを投げるのであれば、この動作はやらなくても構いません。



 4.リール内の道糸を指で押さえて、道糸が絡んでないのを確認する。
 リール内の道糸を指で押さえて、少し竿をしゃくりましょう。道糸が絡んでいないのであれば、指に道糸の張りが伝わってきます。この状態であれば、ダンゴを投げて問題ありません。
 
 少し竿をしゃくって、指に道糸の張りが感じられないときは、おそらく道糸が竿に絡んでいます。ダンゴを投げる前に、竿に絡んだ道糸を解きましょう。
説明
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 5.投げる方向の狙いをつける。
 紀州釣りは基本的に毎回同じ位置にダンゴを投げます。遠くの景色や足元を見て、毎回方向を見定めましょう。
 遠くの景色が一面大海原であるときは、足元に何か目印を置くという手もあります。
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 6.ダンゴを投げる。
 ダンゴを手から離すまで、ダンゴから出ているハリスは指でつまんでおきましょう。ヒシャクで投げるときは関係ありませんが。
 距離感だけは力加減が肝心です。気をつけて投げましょう。



 7.投げた直後、ウキをダンゴの真上に置きたいときは竿をしゃくり、ウキを自分の手前に置きたいときは竿を下げておく。
 この動作の説明はかなり専門的になります。

 ダンゴを投げた瞬間、竿をしゃくるとウキがダンゴに引かれて、ダンゴのそばまで飛んでいきます。これをすると、仕掛けを立てる釣りになります。
 また、これの弱点はウキを飛ばすので、ウキを流す開始位置が毎回多少バラつくことです。ウキを流す開始位置が変わると、ハワセるために必要なウキ下の長さも変わってしまいます。

 ダンゴを投げた瞬間、竿を下げておくと、ウキはダンゴの勢いであまり飛んでいかず、釣り人の足元にウキを置くことができます。すなわち、仕掛けを寝かせた釣りになりやすいです。

説明

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 管理人個人としては、竿を下げておくことをオススメします。その方がウキを流す開始の位置が毎回同じになって、ウキ下の調整がしやすいからです。

 「仕掛けを立てた釣り?仕掛けを寝かせた釣り?それぞれ何のことか」「ウキを流す開始の位置とウキ下の関係」この辺の話は非常に長くなるので、また実技編で話します。



 8.ウキはウキが流れる方向の逆に置く。道糸は道糸が流れる方向の逆から出す。
 インターネットで紀州釣りを検索すると「潮上からウキや道糸を流せ」と、よく出てきますが、この情報はあまり正確ではありません。
 これも詳しいことは実技編で語る……と言いたいのですが、なんでもかんでもそう言うと、石を投げられそうなので、かなり長~くなりそうですが語ります。
 
 まず、紀州釣りの基本を確認します。
 紀州釣りでは、マキエの煙幕は海底でダンゴがつつかれている箇所しかありません。マキエとサシエサを確実に同調できる、というメリットの反面、マキエの煙幕の範囲がフカセ釣りより狭いので、マキエが潮によって流されたら、すぐに同調されなくなってしまう、というデメリットがあるのです。

説明


 つまり紀州釣りはサシエサを留めてダンゴにクロダイが寄るのを待つ釣りなのです。
  (このへんの話はこちらで詳しく語ってます。→紀州釣りとフカセ釣りの違い)  


 ではこの基本を加味した上で、ウキと道糸の理想の位置とはなんでしょうか?
 
 底を切る紀州釣りではダンゴが割れた瞬間、ウキがダンゴの真上にあるのが理想です。
 潮下に流されたら、より深くウキが海中に潜ってしまい、ダンゴが割れた瞬間、大きくサシエサが浮き上がってしまいます。

説明
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 ハワセる紀州釣りではダンゴが割れた瞬間、ウキがダンゴよりも流れの上手(かみて)にあるのが理想です。
 大きく流れの下手(しもて)に流されたら、サシエサがダンゴの割れた位置から離れてしまいます。紀州釣りの基本通り、サシエサをダンゴの位置に留めた方がクロダイがよく釣れます。
説明
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 道糸はウキと釣り人の間に一直線にあって、少し竿先に余裕(糸ふけ)があるのが理想です。
 道糸はウキを引っ張らないことが大事です。フカセ釣りと違って、道糸がウキを引っ張ると「ウキが潮に乗って自然に流れない」というのはデメリットではありません。それはどうでもよいのです。
 
 紀州釣りでは道糸でウキを引っ張ると、サシエサが浮き上がってしまうことが問題なのです。
 紀州釣りではダンゴが割れた位置にサシエサを留める釣り方です。なのに、道糸がウキを引っ張ると、サシエサが留まらずに動いてしまいます。

説明
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 まとめると……
 ・底を切る紀州釣りではウキがダンゴの真上にあるのが理想
 ・ハワセる紀州釣りではウキがダンゴよりも上手(かみて)にあるのが理想
 ・道糸はウキと釣り人の間に一直線にあって、竿先に少し余裕(糸ふけ)があるのが理想
 
 まずこの理想の位置を知ることがとても重要です。(ネット上にこの情報が少ないのが悔しいです)
 理想の位置を知っていれば、あとのテクニックはすべてその応用です。
 
 底を切る紀州釣りの場合でも、ハワセる紀州釣りの場合でも、ウキはウキが流れる方向の逆に置きましょう。そうすればダンゴが割れた瞬間、理想の位置に近づきます。
説明
 
 道糸も、道糸が流れる方向の逆から出しましょう。そうすればダンゴが割れた瞬間、理想の位置に近づきます。
説明
 
 ここで注意しなければならないのは、潮の向きや風の向きは直接関係ないということです。
 あくまでもウキがどっちの方向に動くか、道糸がどっちの方向に引っ張られるか、ということが重要です。
 
 つまり、たとえ潮が右に動いていても、風の影響で、実際にウキが左に動くのならば、右からウキを流すべきです。
 たとえ風が右に動いていても、潮の影響で、実際に道糸が左に動くのならば、右から道糸を出すべきです。
説明
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 もしウキが払い出る方向に動くのであれば、手前にウキを置きましょう。
 もし潮も風も動かず、ウキがまったく動かないのであれば、ウキは最初から理想位置に置きましょう。
説明
 
 どこかのサイトや動画では「ダンゴを投げたらウキや道糸は潮上に置きましょう」と簡単に説明していますが、それは厳密には間違いです。(たぶんこんな複雑な概念を説明する時間がないから仕方なく簡単に説明しているのだと思います)
 ウキや道糸は実際に流れる方向の上手(かみて)に置きましょう。必ずしも「潮上に置く」「風上に置く」ではないので注意してください。理想の位置を知っていれば、簡単に答えがわかるはずです。



 9.ダンゴが沈むのに必要な道糸を出し、不必要な道糸を巻き取る
 これは表題の通りです。ダンゴを引っ張らないように道糸を出しましょう。
 必要分の道糸を、一気に出すか、少しずつ出すかで、ダンゴの沈むスピードが若干異なります。
 詳しくはこちらをどうぞ。 →ダンゴを早く沈めたいときは、竿先とウキの間の道糸を持ち上げる  



 10.ダンゴが割れるのを待つ間に、手を払ってダンゴ材を落とす
 ダンゴを握った後に、すぐに手を払って、それから投入動作をとっても構いません。
 しかしその動作を、この段階で行うと2つのメリットがあります。

 A・ダンゴ材を手で払う動作の時間を節約できる。
 ダンゴを投げてサシエサが海にある時間は、釣れる可能性のある時間です。釣り人がダンゴを握っている時間というのは釣れる可能性のない時間です。だから非常に当たり前のことですが、素早くダンゴを握って素早く投入した方がより多く釣るチャンスがあるのです。
 ダンゴ材を手で払う動作というのは釣果には関係ない動作です。その動作をダンゴが割れるのを待つ時間に行うことで、時間のムダを減らします。この動作はわずか10秒くらいでしょうが、ダンゴを握るたびに行えば、1日で何十回と行うことになり、仮に100回なら1000秒(約17分)のムダとなります。
説明

 B・繊細な握り加減そのままのダンゴをすぐ投入できる。
 ダンゴは握った直後から時間が経つほどに少しずつ固さが緩んできます。たとえばダンゴを1分で割るために、繊細な握り加減で1分で割れるダンゴを握ったとしましょう。そのまますぐに投入すれば1分で割れるのですが、手を払う動作の間に、ごくわずかに緩んで57秒で割れるダンゴに変化してしまうかもしれません。
 「そんなわずかな差を気にするのか!?」と思う方も多いでしょうが、実際、紀州釣りの名人はそこまで気にしています。
説明
 
 しかしこのテクニックはデメリットもあります。
 汚れた手で竿やリールを触るので、道具が汚れてしまうということです。釣行後にしっかり清掃するから気にしない、という人ならこのテクニックを実践しましょう。
 



 以上。
 これがあくまで基本の投げ方です。「基本」ということは「応用」もあります。
 
 たとえば風が強いときは道糸を水面下に沈めるために、ダンゴが沈んでいる間、わざとウキが沈む程度に道糸を張ったり……。
 たとえば潮流が速いときは潮上へ10mくらい歩いていき、そこに道糸やウキを海面に浮かべてから、また釣り座に戻ってダンゴを投げたり……。
 
 このへんの応用技も、また実技編にて解説します。(理想の位置について考えれば解説せずともわかるかもしれませんが)          




詳しい解説


 みなさんはダンゴを投げたときの着水音に注意したことありますか?
 実はこれ、紀州釣りの豆知識なんですが、ダンゴの握り加減等によって、着水音に差が生まれます。

 文字で音を表現するのは難しいのですが。少し大きめの石を投げたときのような「ドッポーン」という音ならば、そのダンゴはしっかり固く握られています。
 注意しなければならないのが、たくさんの砂利を投げたときのような「バシャーン」という音。この音の場合、ダンゴの握り加減が(おそらく)弱すぎます。ダンゴがしっかり固まってないときに発生する音です。たぶん海底で1分以上保持するようなダンゴではないはずです。

 自分がちゃんとダンゴを握れているか不安な人は、着水音にも注意して聴いてみましょう。

《オススメ》  
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