【第2章:ポイント選び①】

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»重要な4つ:水深、潮の速さ、海底の地形、波高
»潮の濁り、魚影の濃さ
»ゴンズイとサンバソウ:彼らが少ない釣り場
»ボラ:ボラがいるのは良い釣り場か?
   





質問

 紀州釣りに適しているのは、どんな釣り場ですか?

回答

 初心者は水深5m前後、潮の速さは分速2m以内で、とりあえず根がかりしない、波高の低い堤防の内向きを選ぼう!

やさしい解説

 初心者が釣り場を選ぶときのポイントを解説します。

ポイント1

・水深は5m前後がよい


 紀州釣りは最大水深20mくらいまで対応することができます。しかしそれは釣り人が上級者である場合です。水深が深くなればなるほど、紀州釣りの難度は高くなります。おそらく初心者がいきなり水深15m以上の釣り場に挑戦しても、ダンゴが海底まで持たず、釣りにならないでしょう。
 かといって、浅すぎるのも問題です。浅くて海底が丸見え、なんて釣り場では、クロダイはおろか、ボラですら釣るのが難しくなります。

 なので、初心者にオススメは水深5m前後です。もし近所にそんな釣り場がなければ、水深3m~8mまでの釣り場なら、なんとか初心者でも紀州釣りができるはずです。







ポイント2

・潮の速さは分速2m以内で!


 紀州釣りには「穏やかな潮流」「トロい潮」「ゆっくりな流れ」が良いとされています。
 しかしこれらの言葉はどこか抽象的です。実は管理人も初心者のとき「トロい潮って具体的にどのくらいの速さなんだ!?」と悩んだことがあります。なので、当サイトでは指針をハッキリ言い切ります。
 
 初心者のうちは、分速2m以内の潮の速さがオススメです。

 これは水深以上にとても重要な要素です。というのも、潮流の速い釣り場は高難度のテクニックが必要なのです。分速10mも潮が速かったら、名人でも苦戦します。紀州釣りというのは遅い潮ほど釣りやすくなる釣法なのです。

 潮流の速さを調べるには、海にウキを浮かべてもよいですが、海面のゴミや泡を見るのが一番簡単です。
 泡の流れをじっと眺めて、1分間で何メートル動くか観察してみてください。もし泡がなければ、海に小石でも投げ込めば、簡単に泡立ちます。







ポイント3

・とりあえず、根がかりしない場所


 一応念のために解説しますが「根がかり」とは釣り鈎が海底の岩礁などに引っかかってしまうことです。俗に言う「地球を釣ってしまった」状態ですね。

 根がかりしない場所を選ぶことも、紀州釣りには重要な要素です。紀州釣りはサシエサをダンゴに包んで、海底に沈めます。なので、海底にテトラポットや岩礁があると、すぐ根がかりしてしまいます。
 また、海底が起伏に富んでいると、ダンゴの投げ込む微妙な位置によって水深が変化し、ウキ下の長さが定まらなくなってしまいます。(下図参照)



 というわけで、平たんな砂地の海底が紀州釣りには最適です。

 平たんな砂地で釣りをすると、さらに2つのメリットがあります。
 それは一度ダンゴに引き寄せられた魚が居つきやすくなることと、サシエサがミゾに隠れてしまわないことです。(下図参照)



 しかし水深が5m以上の釣り場になると、人間の眼では海底の様子が見えません。「ここは砂地なのか?」と、いくら考えても、実際に釣りをしてみるまでわからないものです。だから初心者のうちは「とりあえず10mくらい先へダンゴを投げて、根がかりしない場所なら良いや」と簡単に考えて釣りをしてください。根がかりしたら、場所移動しましょう。







ポイント4

・波高の低い堤防の内向き


 突然ですが「波」と「潮」の言葉の違いがわかりますか?

 たとえば「波が荒い」と言ったら、波高が高いことを指します。
 たとえば「潮が速い」と言ったら、潮流が速いことを指します。

 だから「波高の低い堤防の内向き」と言ったら、それは「波の穏やかな堤防の内向き」という意味です。
 紀州釣りのポイント選びには、この「波高」も重要な要素です。一般的に波高が低いほど、紀州釣りはやりやすくなります。なぜかと言うと、ウキが波にのまれることが少なくなり、ダンゴの割れや魚のアタリが判断しやすくなるからです。(下図参照)



 特に初心者の方は、ただ単にウキが波にのまれただけなのに、それをアタリと勘違いしてアワセることが多いです。
 しっかりとした判断力が身につくまでは、波高の低い堤防の内向きを選びましょう。
 
 また、なぜ堤防の内向きなのかと言うと、内向きは大抵の場合、波高が低いからです。また外向きに比べて、潮流も遅く、濁りも強いことが多いです。紀州釣りの初心者にとって好条件なことが多いので、堤防の内向きをオススメします。(ただしクロダイの寄りは一般的に外向きの方が早いです)







詳しい解説

 上記で述べた4つのポイントは特に重要なものとして解説しました。
 次に紹介するのは、さほど重要ではないが注意した方がよいポイントです。


ポイント5

・潮の濁り


 潮が澄んでいても、濁っていても、クロダイは釣れるときは釣れるし、釣れないときは釣れません。
 しかし多くの釣り人たちの経験則として、クロダイは潮が濁っているときの方が釣れやすいようです。それはおそらくクロダイの警戒心が安らぐからでしょう。

 突然ですが、クロダイの天敵をみなさんはご存知でしょうか?
 もちろんサメやスズキのフィッシュイーターたちも天敵です。しかし大きく成長したクロダイには、海中でほとんど敵がいなくなります。

 クロダイの一番の天敵。それはミサゴなどの猛禽類です。そもそもクロダイの体が黒い理由も、野鳥たちから見えづらくするため、カモフラージュのためだと考える人もいます。
(青の下線部分には参考文献があります。Amazon→海野徹也著 クロダイの生物学とチヌの釣魚学)

 クロダイの敵は空にいる。なので、クロダイは頭上への警戒心が強いです。だから地上が見えないくらい潮が濁ると、自然と警戒心が解けて行動が大胆になり、釣れやすくなるのではないでしょうか。






ポイント6

・魚影の濃い場所


 紀州釣りでは基本的に、魚がたくさんいる場所ほど、クロダイがよく釣れます
 それは魚たちが集まることによって、ダンゴの煙幕をより広範囲にまき散らしてくれるからです。

 ダンゴの中に含まれるアミエビは、オキアミのおよそ2倍の量のアミノ酸を含んでいます。クロダイにとってアミノ酸は大好物です。そもそもクロダイがオキアミを食べるのは、その形がエビに似ているからではなく、アミノ酸が含まれているからだと考えられています。
 クロダイがアミノ酸の匂いを嗅ぐと、摂餌本能が刺激され、積極的にエサを食べるようになります。人間がおいしそうな食べ物の匂いを嗅いで、空腹を覚え、つい食事したくなるのと同じですね。(下図参照)



 逆にエサ取りが全くいない場所でクロダイを釣るのは、かなり難しいと言わざるを得ません。ダンゴを何投してもオキアミが無傷で帰ってくる……なんて釣り場では、苦戦を強いられるでしょう。
 そもそも紀州釣りは、エサ取りから守るためにサシエサをダンゴに包む釣り方なので、エサ取りがいなければ、サシエサをダンゴに包む意味がないわけです。
 まったくエサ取りがいない冬など、紀州釣りよりフカセ釣りの方が有利になる秘密はここにあります。







ポイント7

・ゴンズイやサンバソウだらけじゃない場所



 魚影の濃い場所ほどクロダイがよく釣れます。しかしどんな魚でも集まれば良いわけではないです。

 ゴンズイやサンバソウだらけの場所では、逆にクロダイが釣れる可能性はかなり低くなります。

 ゴンズイには「集団で行動して、しつこい」という特徴があります。彼らは集団でダンゴを貪り、クロダイが近寄ってきても、ダンゴから離れようとしてくれません。ゴンズイが集まると、釣り人はずっとゴンズイを釣り続けることになります。サシエサに固いコーンやサナギを使っても、なかなか避けることはできません。

 また、サンバソウには「非常に獰猛」という特徴があります。
 そもそもサンバソウとは、磯の王者イシダイのこどもの呼び名です。サンバソウはダンゴに近寄ってくると、周辺の魚たちを威嚇して蹴散らしてしまいます。自分より何倍も大きいクロダイさえも蹴散らしてしまうので、必然的にサンバソウだらけの場所ではクロダイは釣れなくなります。

 ゴンズイとサンバソウ。彼らがダンゴに集団で近づいてきたときは、しばらく釣りを休憩して去るのを待つのが最善の手段かもしれません。サンバソウはさほどしつこい性格ではないので、少し待てばいなくなってくれることでしょう。

説明



区切り


ポイント8

・ボラがいる場所


 上記では「魚影は濃い方が良いが、どんな魚でも集まれば良いわけではない」ということを解説しました。
 では、ボラの場合はどうでしょう。

 紀州釣り師の中では、ボラも嫌がる人が多いです。その理由は大きく分けて2つあります。

・ボラが嫌がられる理由
 1【鈎がかりすると、釣り上げるのに相当な腕力を消耗するし、場が荒れてしまう】
 2【ボラが集まると、大きなダンゴアタリとスレアタリが頻発して、本アタリとの判断が難しくなる】


 しかしボラが集まると、良い点もあります。

・ボラの良い点
 A【大きな魚体なので、その分ダンゴの煙幕をより広範囲にまき散らしてくれる】
 B【ボラとクロダイは行動パターンや生息域が似ているので、ボラがいたらクロダイもいると考えてほぼ間違いない】



 ちなみに管理人はボラがいたら嬉しいです。経験則として、ボラがいた時の方がクロダイがたくさん釣れるからです。

 また、初心者が紀州釣りをして、クロダイが釣れなかった場合「本当にこの海にクロダイいたのかな」と考えることがあると思います。その場合、ボラがいたかどうかを考えてみてください。
 ボラがいなかったらクロダイもたぶんいなかった。ボラがいたらクロダイも必ずいた。そのように考えて差し支えないです。

 ほかにもベラとかフグとかいる場合は? その質問はこちらのページでお答えします。
  →釣れた魚から状況を推理する、他魚との関係

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