【第10章:魚がヒット】

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»アワセ方:竿を右にしゃくるか、左にしゃくるか?
»やりとり:簡単に竿の角度を90度に保つ
»釣れた魚から状況を推理する、他魚との関係《注目》
»キビレ、フグ、カレイ、シロギスが釣れた場合
»キュウセンベラ、カサゴ、磯ベラが釣れた場合
»カワハギ、メジナ、アイゴ、アジが釣れた場合
»チャリコ、サンバソウ、ゴンズイ、ボラが釣れた場合
»ウキが全身沈むというのも良い兆し
   





質問

 上手なアワセ方を教えてください。

回答

 糸ふけが少ないときは上にアワセ、糸ふけが多いときは巻き取ってアワセるか、糸ふけが膨らんでいる方向の反対へと横にアワセを入れましょう。

やさしい解説

 

・上手なアワセ方


 今回はアワセのお話です。
 念のために解説しますが、「アワセ」とは魚がサシエサを食べている様子を察して、釣り人が竿を立てて糸を引っ張り、サシエサ内部の鈎を魚の口に引っ掛ける行為のことです。

 糸ふけ(余計に出された道糸)が少なければ、どの方向に竿を立てても、しっかりアワセが入ります。問題は糸ふけが多い場合です。


 紀州釣りでは大抵の場合、ウキにアタリが出る頃には、糸ふけが潮に流されて、潮の方向へと糸が湾曲しています。
 ここで問題なのが、竿を立てる方向です。糸ふけが少なければ素直に上へ竿を立てればよいのですが、今回は糸ふけがたくさん出ていて、釣り人から見て右に湾曲している場合を想定します。さて、釣り人から見て右と左、どちらへ竿を立てれば、しっかりアワセが決まるでしょうか?

 正解は……「左(潮向きの反対方向)に竿を立てる」です。
 その方が、海水の抵抗によって糸が大きく動き、力が鈎まで伝達されるからです。


 上方向に竿を立てても、うまくアワセられないときは、右か左か横方向(潮向きの反対方向)を試してみてください。
 もちろん、隣に人がいないことを確認してからですよ




区切り


質問

 魚がヒットしたときの上手なやりとりを教えてください。

回答

 初心者はまず落ち着くことを第一に考えてください。慌てずに竿は自分の頭の上へ立てておきましょう。そして魚が進む方向へと竿を傾ければOKです。

やさしい解説

 

・上手なやりとりの仕方


 魚とのやりとりは、初心者の場合、まず落ち着くことが大事です
 思わぬ大物が掛かって、ドラグが逆回転して道糸が出ていることに気づかず、勢いよくハンドルを回してリールを空回転させる初心者のなんと多いことか。気持ちはわかりますが、まずは落ち着きましょう。

 糸は魚が近づいた分だけ巻き取れば十分なのです。相手が大物のときほど、ハンドルをガンガン巻いてリールの力で魚を引き寄せようと考えないでください。使うべきなのは竿のパワーです。
 大物が掛かった場合、最も大切なのは竿の角度です。竿の弾力が最も活かせるのは竿が90度の弧を描いたときと言われています。


 90度。しかしやりとりの最中にまさか分度器で竿の角度を測ることはできません。が、大丈夫です。簡単に90度に保つ方法があります。

 魚とやりとりしている最中、あなたの視線はどこにあるでしょうか?
 大抵の場合、魚の姿が見たくて、糸の続く先を見ているはずです。
 そんなあなたの視線に対して直角に、イメージとしてはご自分の頭の上に竿を立ててください。そうすれば自然とほぼ90度を保てます。(下図参照)



(三角形の内角の総和は180度なので、実際は竿の角度も90度よりも少し足りないくらいになりますが、まあ「およそ90度になる」と思ってください)


 そして魚の進む方向へと竿を傾けましょう。そうすれば糸が切れにくくなります。(下図参照)







質問

 紀州釣りで釣れた魚から、何かクロダイに関する情報は得られますか?

回答

 もちろんです。釣れた魚の種類によって判断できる情報がたくさんあります。

やさしい?解説

 

・クロダイと他魚の関係


 まず下図をご覧ください。



 これは紀州釣りにおけるクロダイと他魚との関係図です。上部の項目から順に説明します。

【敵】
 「敵」というのは、これが来るとクロダイが逃げてしまう生物たちです。非常にどう猛であったり、魚を捕食する生物で、これが近寄るとエサ取りも逃げるのでダンゴの割れるのが遅くなります。
 「敵」がしつこくダンゴの周りにいるのなら、しばらくダンゴを打つのをやめましょう。


【格上】
 「格上」はクロダイより多少どう猛で強い魚たちです。格上がダンゴに寄ると、クロダイはダンゴから離れてしまいます。「格上」が散るまではクロダイは釣れないと判断して良いでしょう。


【前触れ】
 クロダイの釣れる前触れとして、サシエサを食ってくる確率のある魚たちです。
 管理人が思う「前触れ」の1位は、チャリコ(マダイの幼魚)です。これが釣れた後、1~4投以内にクロダイが釣れた経験がたくさんあります。もちろん絶対ではありませんが。
 (追記:最近わかったのですが、チャリコが前触れとなるのは地方によるみたいです。特に釣り場が関東地方だった場合は前触れとなりやすいです。関西方面、三重県より西ではチャリコの数が多いせいか、これが釣れたからと言って「前触れ」とはあまり考えられないみたいです。)

 2位はボラです。ボラとクロダイの行動パターンと生息域は非常に似ているので、ボラが釣れ出したらクロダイもほぼ確実にダンゴの周りにいると判断して良いです。
 3位はキュウセンベラです。キュウセンベラはクロダイと生息域が似ていると言われています。
 同率3位はヒガンフグです。どういう理屈かわかりませんが、これが釣れる釣り場は間違いなくクロダイも釣れます。


【格下】
 「格下」は文字通りクロダイより格下の魚たちで、クロダイがダンゴに近寄ると散っていきます。いままでクサフグが釣れていたのにサシエサが残り出した。しかもダンゴが割れるのが早くなった……となれば、大チャンスです。間違いなくクロダイがダンゴに寄っているはずです。
 クロダイの気配を察知するために「格下」の動向とサシエサの残り方に変化がないか注意しましょう。
 逆にいままでクロダイが釣れていたのに「格下」が釣れ始めた……というときはクロダイが散ってしまったと判断できます。
 そんなときは次の時合いに向けてダンゴを打ちながら辛抱しましょう。


【格下だけど散りにくい】
 ゴンズイが数匹しかいないのなら、クロダイが時合いになると散ります。しかしゴンズイが集団でいるときは、クロダイが威嚇してもなかなか散りません。しまいには根負けして、クロダイがゴンズイを避けて中層に浮くことがあります。
 ゴンズイが釣れだすと、紀州釣りとしては非常に厄介なので、ダンゴを打つのをしばらく休みましょう。
 
 ゴンズイについてはこちらの記事でも触れています。
  →どんな釣り場が良いか?濁り、魚影、ゴンズイとサンバソウについて


【タナ違い】
 サバやイワシは中層を泳ぐ魚なので、彼らが釣れたということはダンゴが割れた瞬間サシエサが浮き上がっている証拠です。
 紀州釣りは海底へと導いたクロダイを釣る方法なので、このままでは釣れません。もっとウキ下を長くしましょう。




詳しい解説

 

・釣れた魚の特徴


 その他、各生物の注釈を書きます。

【キビレが釣れた】
 キビレは実はクロダイ(マチヌ)と性質が少し異なります。クロダイよりも汽水域を好み、クロダイよりも多少どう猛です。つまり時合いになると、クロダイよりも活発に威嚇して、エサ取りたちを蹴散らします。
 また、キビレはクロダイよりも動くエサに反応しやすいです。ハワセた釣りよりも、底を切った紀州釣りの方がキビレが釣れやすいと言えるでしょう。

【フグ(フグ類)が釣れた】
 フグがいるときはアタリもなく釣り鈎が取られたり、ハリスに傷が入ったりするので注意しましょう。
 また、どういう理屈かわかりませんが管理人の経験則として、20センチを超える大型のフグ類が釣れる釣り場は、一級の紀州釣り場であることが多いです。つまり紀州釣りでクロダイを数釣りできる可能性を秘めた釣り場ということです。

【カレイ、シロギスが釣れた】
 海底が砂地である証拠で、紀州釣りに適しています。

【キュウセンベラが釣れた】
 海底が砂地である証拠で、紀州釣りに適しています。また、キュウセンベラはクロダイと生息域が似ているとも言われています。キュウセンベラが釣れる場所なら、きっとクロダイも釣れることでしょう。

【カサゴ(ガシラ)が釣れた】
 海底が岩礁帯である証拠です。紀州釣りでは根掛かりする危険性があります。
 また、岩礁帯なのでダンゴの投入位置を正確に一定にする必要があります。岩礁帯は少し投入位置がズレるだけで水深が大きく変わるからです。

【磯ベラが釣れた】
 海底が岩礁帯である証拠です。その他特記事項はカサゴと同じです。磯ベラはキュウセンベラと違って、クロダイが釣れる「前触れ」とはなりません。

【カワハギが釣れた】
 まったくアタリが表れずにサシエサが取られることがあるので、注意しましょう。

【メジナ(グレ)が釣れた】
 これが砂地で釣れた場合、当日の海の活性が高いと判断できます。もともとは岩礁帯、磯の魚だからです。なのでクロダイの活性も高い可能性大です。
 また、メジナはオキアミやアミエビ系の練りエサを好むので、コーンを中心としたサシエサ選択をした方が良いでしょう。
 メジナが集団になってダンゴをつつきまわすときは、ダンゴの割れるのが非常に早く、またサシエサもすぐ取られます。管理人の経験則では、メジナの集団がいるときはサシエサをコーンにして、海底で動かさないようにハワセ釣りをするとクロダイが釣れた……という経験が多々あります。

【アイゴが釣れた】
 砂地で釣れることもありますが、付近には岩礁帯もあることが察せられます。なので堤防より磯でよく釣れます。
 アイゴがよく釣れるときは、クロダイが連発したという経験がほぼありません。アイゴを釣り続ける途中途中で、時たまクロダイが釣れる……というパターンが多いです。
 アイゴの元気がよいときは、サシエサにオキアミを付けてもコーンを付けても盗られます。サシエサでアイゴをかわすのは難しいので、ダンゴの水分量や集魚力、そして握り加減を見直すと良いです。

【アジが釣れた】
 アジは集団で回遊し、サバなんかと違って中層から海底まで遊泳します。
 紀州釣りでのアジのアタリはクロダイのアタリと似ている気がする……と管理人は思います。
 オキアミをよく好むので、アジがよく釣れるときはコーンを中心としたエサ選択にすると良いでしょう。

【チャリコが釣れた】
 チャリコはクロダイが釣れる「前触れ」というのは、すでに上記に書いた通りです。その理由をここでは解説します。
 そもそもチャリコは何も障害物のない砂地にはいない魚です。なのに砂地でチャリコが釣れるということは、ダンゴ材の集魚効果が遠方までよく効いている証拠です。また、管理人の経験則としても、チャリコが釣れた後にクロダイが釣れた経験が多いので、「前触れ」の1位としました。
 (追記:チャリコが前触れとなるのは地方によるみたいです)

【サンバソウ、ゴンズイ、ボラが釣れた】
 こちらの記事をご参照ください。
  →どんな釣り場が良いか?濁り、魚影、ゴンズイとサンバソウについて
  →ボラがいるのは良い釣り場か?





 さて。
 少し話が逸れますが、しっかりウキが全身沈んで何かしら魚が釣れる、ということ自体が大きな情報だったりします。
 しっかりウキが沈むときは魚たちの活性が高いです。クロダイの活性も高い確率があります。

 反対にウキが全身しっかり沈まずに、ちょこちょこと小さいアタリでサシエサが取られるときは、あまり活性が高くないか、ウキ下の設定が間違っています。クロダイが釣れるのはもう少し時間が必要、もしくは工夫が必要です。


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