やさしい解説
・正確な水深を測ってもあまり意味がない!
一番大切なことを最初に書きます。初心者の方はここだけでも読んでみてください。
「何度も水深を測っているうちに時間が経つ」という悩みを持つ方は、たいていの場合、その計測方法よりも
正確に測ろうとしすぎることに問題があります。
たとえば正確に「水深は5.20メートルだ」とか把握しても実際の釣果には影響がないわけです。ほとんどの場合、その水深から0.5メートル以上はウキ下を追加して、ダンゴが割れたときサシエサが浮き上がらないようにしないとクロダイは釣れないのですから。
実際紀州釣りの名人と呼ばれる方も、釣り場の正確な水深は把握していないことが多いのです。なんとなくイメージで、「ここの水深は5メートル
くらいだな」とか「もう少し遠くにダンゴを投げると1メートル
くらい深くなるな」とか、その程度知っていれば十分なのです。
重要なのは
正確な水深を知ることではなく、結果としてクロダイを釣ることなのですから。
なので、正確な水深を測ることにこだわる必要はありません。
・釣り始めに目指すウキ下の設定は?
では、釣り始めに目指すべきウキ下の設定は、なんでしょうか。
それはウキ下を正確に「水深ピッタリ」に合わせることではありません。
釣り始めに目指すべきは、
「ダンゴが海底についたとき、ウキが少し海中に潜ったまま浮いてこない」という設定です。この設定を目指しましょう。
この設定にたどり着けば、
自分の握ったダンゴがいつ割れているか簡単に把握することができます。
これは「ダンゴが割れていなければウキが沈んでいる」「ダンゴが割れたらウキが浮いてくる」という、わかりやすい設定だからです。
自分の握ったダンゴがいつ割れているか。それを把握してから、ウキ下を広げたり詰めたり、調整を加えるのが
最も効率的な釣り方です。
なぜそれが最も効率的な釣り方なのか。逆に「自分の握ったダンゴがいつ割れているか」を把握せずに、いきなりウキ下を大きく広げて、いわゆる「ハワセ釣り」をすると、ダンゴがいつ割れているのか一切わからなくなります。
それゆえ、仕掛けを回収するタイミングもまったく掴めなくなってしまいます。
毎回、自分の勘だけを頼りに仕掛けを回収することになると、無駄な時間が生まれやすいです。
ダンゴが割れた地点からサシエサが流されていたら、それは釣れる可能性が非常に低い(可能性ほぼ0%の)無駄な時間です。
すでに
こちら(紀州釣りはサシエサを留める釣り、フカセ釣りはサシエサを流す釣り)で解説した通り、紀州釣りは
サシエサを留めないと釣れない釣り方だからです。
この無駄な時間を減らすには、自分の握ったダンゴがいつ割れているか把握して、サシエサが動き始める時間になったらすぐに仕掛けを回収すべきです。
そうすれば無駄な時間がなくなり、可能性が高い釣り(ダンゴが割れた直後)を何度も繰り返すことができます。
実際、管理人は名人の釣りを見学させてもらったことが何度かあります。
名人はダンゴが割れたと判断したら、
わずか数秒待って、すぐに仕掛けを回収していました。その判断と動作は非常に素早いです。
すでにサシエサが動き始めているのに、儚い望みを捨てきれず、その後もしばらく様子を見続けてしまう……。そんな非効率的な釣りを避けるには、ダンゴが割れるタイミングを把握しなければなりません。
そして、そのためには「ダンゴが海底についたとき、ウキが少し海中に潜ったまま浮いてこない」という設定を目指すのが第一歩です。
・釣り始めのウキ下設定の方法
では上記を理解していただいた上で、
おおまかなウキ下の調整方法について解説します。下図をご覧ください。
これはウキ下調整のフローチャート
(こんなもの描いたのは管理人が世界初じゃなかろうか)と、ウキ下を変更するときの考え方です。
基本的にはこの表の通りに実行すれば3~5投くらいで、釣り始めのウキ下調整は完了します。
目指すべきゴールは
「D:海面下に見える程度にウキが沈んでいる」という状態です。
これに辿り着いたら、ダンゴがいつ割れるのかタイミングを把握できます。そしてその後はウキ下を大きく広げたり、詰めたり、思い思いの釣りをするとよいでしょう。
しかしこの表には書ききれなかった注釈がたくさんあるので、それぞれの処理について以下、細かく解説します。
前提条件1・素鈎でダンゴを握る。
ダンゴを握る際は、素鈎(エサの付いてない鈎)をダンゴ材に入れてダンゴを握ったほうがよいです。
なぜ素鈎なのかと言うと、エサがついていると、最初の1投目からアタリがある可能性や、芯残りする可能性があり、ハッキリと水深を測れなくなるかもしれないからです。
(別にサシエサを付けた方がダンゴを握りやすい、というのであれば素鈎でなくともよいですが……。最初の1~3投からクロダイを釣ろうとしても、たいていは無駄に終わります)
水深がうまく測れない初心者ならば、あせらず、素鈎でダンゴを握るとよいでしょう。
前提条件2・ダンゴはしっかり握る。
水深を測る際は、ダンゴが
必ず海底につく程度には固く握りましょう。
もしも水深が10メートル以上あって、海底につく前にダンゴが割れてしまうと、当然釣り鈎は海中で宙ぶらりんの状態になります。
この状態を初心者の方は、「ダンゴが海底についた」と勘違いしやすいです。
なので「この固さならば絶対にダンゴが海底についているはずだ」と思える程度にはダンゴを固く握りましょう。
ところで、
なぜタナ取りゴムやタナ取り用のオモリを使わないのか、というと、それは単に素鈎でダンゴを握れば事足りるからです。
正確な水深を測るにはタナ取りゴムやオモリは必須です。しかしおおまかな水深でよいと思えば、わざわざそれ等を用意しなくとも3~5投、つまり数分で簡単にウキ下を調整が完了します。
必要ないから使わない……というだけのことなので、どうしてもゴムやオモリを使いたいという、こだわりのある方は気にせず使って構いません。
A・ウキが見えなくなるくらい海中に潜る場合。
どのくらいウキが潜ったか適当な予想で構わないので、潜った分のウキ下を追加しましょう。10センチずつ、とかではなく、1ヒロ~3ヒロ、
大胆にウキ下を広げるのがコツです。
ウキが潜ってから、海面に漂う道糸がどの程度引き込まれたか見ると、予想が立ちやすいです。
遠投で、ウキがどの程度潜っているかわからないときも、引き込まれていく海面の道糸は見えるはずです。1ヒロ~3ヒロ、大胆にウキ下を広げましょう。
B・ウキがまったく潜らずに浮きっぱなし。
ダンゴが海底につくと、ウキ止め糸の動きが止まります。ウキとウキ止め糸の間の距離+半ヒロ、ウキ下を狭めましょう。
ウキ止め糸がよく見えないときは、1ヒロ~3ヒロ、大胆にウキ下を狭めましょう。
C・ウキが少し潜って浮いてくる
ダンゴの投入点とウキの距離、その半分くらい、ウキ下を狭めましょう。おおまかで構いません。
以上が釣り始めのウキ下の調整方法です。
正確な水深を測ることよりも、おおまかに、ウキが海面下に見える程度に調整すれば、それでよいのです。
そしてダンゴがいつ割れているか把握できたら万全です。